-乳がんのセンチネルリンパ節生検-


乳がんのセンチネルリンパ節生検

乳がんの治療

乳がんは、血流や、老廃物を運ぶ体液であるリンパの流れに乗って広がります。リンパ節にがんが転移した場合、全身にも転移する可能性が高いと考えられ、手術では、がんとともに、わきの下のリンパ節もとるのが標準的な治療になっています。実際にとらないと転移の有無が確認できないため、画一的に切除されてきました。

しかし、リンパ節をとると、後遺症が起きやすくなります。リンパの流れが悪くなって老廃物と水分が組織にたまり、腕がむくんだり動きにくかったりするリンパ浮腫(ふしゅ)に苦しむ患者は多いです。

これを防ぐために注目されているのが、センチネルリンパ節生検です。


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センチネルリンパ節生検

センチネルは「見張り」を意味し、乳房のがんが、リンパ管を通じて最初に流れ着いたリンパ節を指します。最初に転移するリンパ節で、ここに転移がなければ、その先のリンパ節にも転移がないと判断し、切除を避ける方法です。

手術前に、乳房に放射性同位元素や色素を注射し、色素に染まったり、放射性同位元素が集まったりしたリンパ節(通常2~3個)をセンチネルリンパ節として摘出します。

同様の検査は、皮膚のがんである悪性黒色腫で始まり、乳がんにも1990年代後半から実施されています。この検査により、95~100%の確率で、リンパ節転移の状況を正しく判定できると言います。

気になるのは、リンパ節を切除しなくても、がんの治癒率に影響しないのかという点です。

欧米では、約500人の患者を対象に、この検査を使って治療する場合と、従来通りリンパ節を一律に切除する手術とを比べた臨床試験では、生存率に差はないという報告があります。有効性を確かめるために、さらに数千人規模の試験が進行しています。

埼玉県立がんセンターでは、これまでに検査した約1100人の約76%は「リンパ節転移なし」と診断され、リンパ節を切除せずに済みました。

ただし、検査でセンチネルリンパ節が見つからないことや、手術中の診断では「転移なし」だったのに、手術後の精密な診断で転移が見つかる場合も、まれにあります。その場合、リンパ節を切除するかどうかなど、事前に話し合うことが必要です。

同センター病理科長の黒住昌史さんは「不要なリンパ節切除によって、後遺症に苦しむ患者は少なくない。まだ確立した治療法ではないが、今後さらに広がるのではないか」と話しています。


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