子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮内の組織(子宮内膜)が、卵巣、子宮と直腸の間など、別の場所にできる病気です。卵巣では、血液がたまって袋状(のう胞)になります。原因はまだ分かっていません。
病巣は、卵巣から分泌される卵胞ホルモンにより増殖、炎症や出血を繰り返し、月経痛をはじめ、下腹部や腰の慢性痛、性交痛、排便痛を引き起こします。不妊の原因にもなります。
鎮痛剤で痛みを抑えることもありますが、症状の進行は抑えられませんでした。痛みを和らげ悪化を防ぐには、卵巣の働きを抑える薬物治療(ホルモン療法)が有効でした。
これまで主に使われてきたのは、GnRHアゴニスト製剤(商品名・スプレキュア、リュープリンなど)でした。脳から卵巣を刺激するホルモンの分泌を下げ、間接的に卵巣の機能を止めます。病巣は小さくなり、痛みもなくなります。
しかし、卵巣から卵胞ホルモンの分泌が止まることで閉経の状態になり、更年期障害と似た副作用が出ます。とりわけ、骨折のおそれが高まる骨量の低下は深刻なため、投与期間は半年に限られます。服用をやめると病巣は再び増殖し、痛みも再燃しやすくなります。
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子宮内膜症の2つの新薬
これに対し、2008年登場した低用量ピルの「ルナベル」と、黄体ホルモン剤の「ディナゲスト」は、黄体ホルモンの働きで、痛みを長期に抑え、悪化を防ぎます。
黄体ホルモンには、
1.排卵や月経を止める
2.子宮内膜組織を縮小する
3.炎症を招く物質を抑える
などの作用があります。
ルナベルは、以前から子宮内膜症患者に自費で処方されてきた避妊用の低用量ピル(オーソM21)と同じ成分です。卵胞ホルモンも配合されているので、更年期障害の副作用はありません。ただし、月経痛以外の痛みには十分に効かないこともありますし、病巣を縮める力もやや弱いです。1か月の自己負担は約2100円です。
一方、ディナゲストは、より強力な黄体ホルモンを含みます。月経時以外の慢性痛も和らげ、病巣も縮小します。卵胞ホルモンは含まれていないため骨量は減りますが、GnRHアゴニスト製剤ほどは減らないとされ、使用期間に限度はありません。7割の患者さんに生理時以外に出血する「不正出血が」見られますが、多くは徐々におさまります。1か月の自己負担は8000円前後です。
東大病院産婦人科講師の百枝(ももえだ)幹雄さんは「効果や副作用、費用を踏まえますと、まずルナベルなどの低用量ピルを服用するのが基本です。ピルで緩和できない月経痛以外の痛みや、血圧が高いなどピルが使えない場合に、ディナゲストを使うのが望ましいです」と話しています。
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