-尿漏れをともなう「性器脱」の治療-


尿漏れをともなう「性器脱」の治療

「性器脱」の原因と症状

女性の骨盤の中には、膀胱や尿道、子宮、直腸など多くの器官があります。これらの臓器は、「骨盤底」と呼ばれるハンモック状の筋肉や靱帯(じんたい)が囲み、重いものを持ち上げるなど、力がかかってもずり落ちないように支えています。

ところが、骨盤底が緩んだり、筋肉の繊維の一部が切れたりすると、重みに耐えきれずに臓器が下がり、膣(ちつ)壁が臓器に押されて飛び出してしまいます。下がった臓器により「子宮脱」「膀胱瘤」「直腸瘤」と呼びますが、複数の臓器が飛び出すこともあり、「性器脱」と総称されています。

これらの症状は、50歳以降に多く、女性の約1割が経験すると言われています。座った時に、またの間に不快感を感じるなど、日常生活での不自由さは、大きいです。尿道も変形して尿が出にくく、尿漏れなどの症状も現れます。


スポンサードリンク


「性器脱」の治療

落ちてきた臓器が膣の内部にとどまる初期なら、骨盤底の筋肉を締める体操や女性ホルモンの補充をすることで対処できます。

膣の入り口に達している場合、膣の中に歯止め役としてリング状の器具(ペッサリー)を入れることもありますが、膣内が炎症を起こすことも多く、長く使うことは難しいです。

さらに進行すると、膣の外まで飛び出してしまい、歩けなくなったり、膣が乾燥して出血したりすることもあります。こうなりますと手術の対象になります。

「性器脱」の手術

手術では、垂れ下がった臓器を元の位置に戻し、再発予防のため膣壁と臓器の間を補強します。子宮は摘出か一部を切除することもあります。

補強は、従来は骨盤内の組織(筋膜など)を重ねたり、強く縫い合わせたりしていましたが、もともと傷んだ組織を使うため、1-3割は再発していました。

これに代わり、ポリプロピレン製のメッシュで補強する方法が、数年前から普及してきました。伸びない素材で、膣壁と臓器の間に入れることにより、丈夫な「壁」を作ります。

昭和大横浜市北部病院泌尿器科教授の島田誠(しまだまこと)さんは「メッシュ手術の長期の治療成績はまだ出ていませんが、これまで実施した例では、再発率は5%以内になると思います」と話しています。

ただし、メッシュがずれて体外にはみ出したり感染を起こしたりする恐れもあり、手術には熟練した技術が必要になります。手術は1週間ほど入院して行い、保険がききます。

「性器脱」の予防は、産後の骨盤底筋ケア

性器脱を引き起こす骨盤底の損傷は、コルセットなどでの胴回りの締め付けや、便秘でいきむといった骨盤底に負担をかける動作の積み重ね、閉経、肥満も影響します。なにより最大の原因は出産です。赤ちゃんが産道を通る時、骨盤底が大きく引っ張られるからです。

三井記念病院産婦人科医長の中田真木(なかたまき)さんは「出産では上手にいきむ、産後3週間はこまめ

に横になり骨盤底に負担をかけない、などの予防が大切」とアドバイスしています。

性器脱の治療は、産婦人科と泌尿器科が担当します。泌尿器科でも、女性専用外来を設けるなど、かかりやすさに配慮した医療機関も出てきています。

子宮口が開いてから出産まで5時間以上かかつたり、3500グラム以上の赤ちゃんだったなどの場合は、骨盤底筋の受けたダメージは大きいです。自然の回復力があるので、産後3週間は養生し、その後、骨盤底筋を鍛える体操を取り入れてください。

なお、体形を早く元に戻そうときついガードルやコルセットを締めたり、腹筋運動をしたりという点も、骨盤底筋に大きな負担がかかります。希望する場合は、1か月健診で骨盤底筋の具合を確かめてからにしましょう。


スポンサードリンク


関係医療機関

昭和大横浜市北部病院

三井記念病院

関連ページ

不妊症の卵管鏡下卵管形成術

不妊治療の胚盤胞移植(はいばいほういしょく)

がん治療前の不妊対策「ガラス化法」と「放射線遮断」

妊娠糖尿病の新しい基準

双胎間輸血症候群のレーザー治療(胎児治療)

子宮がんの広汎(こうはん)子宮頸部摘出術

子宮筋腫の集束超音波治療

子宮筋腫のマイクロ波治療

子宮内膜症のロイコトリエン拮抗薬(きっこうやく)を使った治療法

子宮頸がんのHPVワクチン

子宮内膜症の新治療薬「ルナベル」と「ディナゲスト」

卵巣がんの新治療薬「ドキシル」(一般名ドキソルビシン塩酸塩)

乳がんのセンチネルリンパ節生検

「乳がん内視鏡手術」による乳房の温存

おとなしい性質の「非浸潤性乳管がん」

脂肪使った新しい「乳房再建法」

更年期障害のホルモン補充療法(HRT)

性器ヘルペスの再発減らす抑制療法


スポンサードリンク


不妊症の治療ガイド

スポンサードリンク



不妊症/健康

↑ ページトップ